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膝複合靱帯損傷のパターン(と、腓骨神経麻痺) [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

今日は久々、整形外科医が読んで興味を示しそうな話題を書いてみます。
ってか、整形外科医しかわからない話になりますが、ご容赦ください。


そんな今日のネタは、Journal of Orthopaedic Trauma (JOT)からの論文、
『Investigation of Multiligamentous Knee Injury Patterns With Associated Injuries Presenting at a Level I Trauma Center』
です。


内容的には、外傷センターが膝関節複合靱帯損傷の頻度を調査したというもの。
詳細の記述は避けますが、頻度的には
① ACL-PCL-PLC (43%)
② ACL-PLC    (17%)
③ ACL-PCL-MCL (17%)
と続き、単純なACL-PCL損傷はわずか5%しかありません。


個人的には "膝関節複合靱帯損傷≒膝関節脱臼” として考えているので、
この結果は当然かなー、と、思います。
転落や事故などの高エネルギー損傷では、単純な前後方向の力単独での損傷というのはほとんどなくて、
必ず回旋や内外反の力がかかっていますからね・・・"(ノ_・、)"


その他にはPLC損傷の詳細調査(Popliteus-LCL、Popliteus-LCL-Bicepsで9割近く。LCL単独はまれ)や、
合併損傷の頻度に関わる記述があります。
過去、個人的に苦しい戦いを強いられた合併症として腓骨神経麻痺や血管損傷があるのですが、
やはりどちらの損傷も、20%以上の症例に合併しております・・・


一番面白かったのは、腓骨神経麻痺を合併した時の複合靱帯損傷形態のお話。
ACL、PCL、PLCの3か所が絡んだ複合靱帯損傷パターンではどう考えても、
ACL-PCL-PLCにおける腓骨神経麻痺が一番多い(58%)のは間違いありませんが、
ACL-PLCと、PCL-PLCではどちらの方に腓骨神経麻痺が多かったと思います???
本文中の考察ではそのあたりの原因についてはほとんど触れられていませんでしたが、

・受傷機転(受傷時の大腿骨と脛骨の位置関係)
・腓骨神経の走行および、受傷時に牽引される方向、Entrapmentを起こしうる解剖学的部位

を考えると答えはおのずと出てきまして・・・
ACL-PLCでは21%、PCL-PLCでは5%と、大きな差があるんですよね。
僕はPLCの修復、再建を行う時には必ず腓骨神経も剥離する事にしているのですが、
今後は(特に遠位の前方に入っていく部位で)神経のダメージがないかどうかもしっかり確認しなくちゃな、
と、感じさせられました。


PLCを含む複合靱帯損傷は、年に2~3回あるかないかという非常にレアな症例なのですが・・・
レア症例の治療戦略構築においては経験だけでなく、文献的な知識が大きな助けになってくれます。
たまたま流し読みをしていて拾った文献でしたが・・・
意外とみなさん気にしているところだと思い、紹介してみました。

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ハヤママ

先生、こんばんは。
昨年、左膝前十字靭帯損傷で相談させて頂きました。
10月に手術し、今、術後8ヶ月です。
バスケに復帰したのですが、古傷の右膝が痛くて、深く曲げられなかったり、時々水も溜まったりします。
右膝は17年前にACL再建と外側半月板切除しています。
何年か前にも捻ったことがあります。

今通ってる病院の先生は右膝に関してはあまり診る気がないみたいで…。
右膝は善衆会病院で手術したので、一度受診してみようかと思ってます。受診しても大丈夫ですかね…?長いこと行っていないので、なんとなく行きずらくて。

こんな、くだらない質問ですみません。
by ハヤママ (2013-06-15 23:37) 

simimasa

⇒ハヤママ様

全く問題ないと思いますよ。是非受診をして見てください。
確か月、火、木なら木村先生も外来に出ていらっしゃるはずです。


by simimasa (2013-06-17 00:25) 

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