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両側ACL損傷の治療は? [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

最近は仕事にかまけてあまりACLの話をしてなかったってことで、今日は久々にACL関連の話を。


昨日、タレントの北斗晶さんが両膝の前十字&後十字損傷と言う事で、
両膝とも手術を行うという話がありましたね。
僕も何人かプロレスラーの患者さんがいますが、プロレスの選手は膝の靭帯が切れっぱなしの人が多くて。。。
再建しても、プロレスというのは非常に再断裂リスクの高い種目(/□\*)
ドラゴンスクリューなんかを食らおうもんなら、その一撃であっさりと再断裂しちゃう場合もあるんだろうな、
と、思うと、確かに現役のうちに再建というのは難しいかもしれません。


北斗さんもそんな流れで十字靱帯断裂を放置していたとの事ですが、
今年は24時間マラソンで一杯練習してたからかな?
どうも両膝とも歩くのが大変な状態になってしまったらしく、手術を行うそうです。
僕が読んだスポーツ新聞では、【前十字靱帯と後十字靱帯の手術】、としか書いてなかったので、
靭帯再建をするのか、人工関節置換術をするのかははっきりしないのですが、
全治1年というニュースの話と彼女の年齢を考えると、おそらく靭帯再建術なんでしょう。


僕も今まで、初診時に両膝のACLが切れている患者さんは5人ほど経験しております。
うち1人は、片膝の自覚症状がほとんどなかったため片膝しか再建手術をしていないのですが、
残る4人は両膝ともACL再建手術を行いました。
両膝の再建を行う時には、2回に分けて片膝ずつ行う方法と、1回で両側を行う方法があります。


両膝ともACL再建をした4人のうち、最初の1人は春休みと夏休みの2回に分けて再建手術をしたのですが、
最近は早期のスポーツおよび社会復帰のために、1回の入院で両側の再建を行うようにしております。
ただ、同時に両膝を再建してしまうと再建後早期のリハビリや日常生活に支障をきたすため、
通常2週間の入院の所を3~4週の入院としてもらい、1~2週あけて2回の手術という形にしてもらっています。


術後早期荷重を許可している施設では両膝同時再建手術を行うという選択肢もあるかと思うのですが、
僕個人の考えとしては術後1~2週の完全免荷および関節固定期間を作る事で移植靭帯の癒合が早まり、
術後6か月での臨床成績や競技復帰率が高まると考えておりますので、
術後超早期におけるリハビリの安全性を保つ為、このようなやり方でやらせてもらっています。


もちろん、このやり方が絶対に正しいというわけではありませんケド(・ω・;)
ただ、片膝をやった後にしばらく時期をあけて逆の膝というのは、
膝関節の回復過程が競技に影響する時間が、両膝同時の治療に比べて長くなってしまうので。。。
個人的には、両膝を同時に治療するという方法をお勧めしております。
もちろん、運動をそれほどしていない人にとっては片膝ずつの手術というのもアリだとは思いますね。


北斗さんの場合・・・
・アスリートは引退しており、現在はスポーツを生業にしている訳でない事
・職業も主婦&タレントという、比較的負荷が少ないものである事
・ACLに加え、PCLや側副靭帯?も同時に再建しなくてはならない事
などから、免荷や運動制限期間を厳密に守らせるために、片膝ずつの手術になるのかな?
と、勝手に推測しています。
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ACL損傷後のレースにおける負の要素 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

昨日は尾瀬岩鞍へ、群馬県選手権のサポートに。。。
今月は毎週水曜の研究日が、スキー選手のサポートになっております。

今日のコースは国体女子沢コース。
去年の地震でチャンピオンコースのゴールハウスが壊れた?との事で、
それ以降のレースはこちらのコースがメインとなっているようです。

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ただ、滑る選手にとってはこっちの方が難易度高いし、差が出やすいコースかな?と、思います。
去年は自分自身が初すべり&初ゲートみたいな感じで滑ったもので・・・"(^_^;)"



滑っているACL再建後の選手を観察していて、最近気がついた事が2つあります。

① SLに比べてGSの方が、再建後の色々な負の影響を受けやすい?
② バーンの雪質によって、影響を受けやすい?

という2点です。

①については、2年ほど前より薄々感づいていました。
ターンを瞬間的に終わらせるスラロームに対し、外力が大きく、長い時間耐えなくてはならないGSの方が、
復帰直後のシーズンはパフォーマンスが落ちているケースが多いように感じます。

②については、昨日のレースでなんとなく推測した仮説の段階なのですが、
ACL再建後、または問題のある選手は、他の選手に比べ1本目と2本目の差が大きかったのです。
1本目は雪が柔らかく、ところどころにコロコロが出るような足場の作りにくい雪面だったのに対し、
2本目は適度に水分が入り、締まったバーンになったんですよね。
先週の新潟でも、やはり降雪直後の柔らかいバーンではACL再建組が苦戦している印象を受けました。


今までの経験上、ACL再建直後には

・ベンディング動作のような、上下動を使ってウェーブを吸収しなくてはならないような穴掘れのコース
・細かい縦溝が入っていたり、洗濯板状に荒れるような、板に細かい振動が伝わるバーン

では、なかなかうまく滑れないというのは良く聞く話だったのですが・・・
もしかしたら、足場の作りにくい(≒安定した軸が作りにくい)シチュエーションが、ツラいのかもしれませんね。


そのへんのあたりは、もう少しいろいろ見ていきたいと思っております。
ちなみに自分もエントリーはしていたのですが・・・危険を感じて、前日にドロップしてもらいました(笑)
最近は本業が忙しく、トレーニングの時間も取れないので、そろそろ引退を考えています。
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ACL損傷診療ガイドライン [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

2年ほど前に、ACLガイドラインのClinical Questionを作成しているとちらっと書いた事がありますが、
ようやくそのガイドラインが完成し、南江堂から出版になっております。

⇒ http://www.nankodo.co.jp/wasyo/search/syo_syosai.asp?T_PRODUCTNO=2269811

第1版に比べ、基本事項からTopicsまで幅広い範囲のCQを取り入れただけでなく、
それぞれの項目の記述もより深いものになっております。
内容に関しても、実際に外来で患者さんによく疑問として聞かれる事が増えましたね。
専門医を取るか取らないかくらいの学年の医師や、膝関節外科を始めたばかりの医師にとっては、
まさにどストライクの内容が詰まっている一冊かと。。。
患者さんの立場で読んだとしても、いろんな理解の助けになってくれるかもしれません。


大した仕事はしてないけど抄録作成協力者として自分の名前が載っているのは、やっぱり嬉しいですね!
一生の記念になるんじゃないかなー、親に見せたら喜ぶんじゃないのかなー、くらいの大きな出来事ですわ。
でも、自分が作成した抄録はだいぶ添削されておりました。。。
(/;>_<))/~~~

本質は変わっていなかったのを確認したので、ちょっと安心しましたけどね(笑)
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トレーニング2日目 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

今日も朝から夕方まで、トレーニング漬け。。。
昨日はパートナーの先生に手術をしてもらったので、今日は僕が執刀させてもらいました。
ACL-R (BTB rectangular), PCL-R (STG double bundle), Popliteus & LCL-R (STG)に加え、
Meniscal Repairをこれでもかというほどやってきました。

その後に余った時間でACL/PCL/PLCの骨孔をいろんなアプローチからガイドワイヤーを刺して、イメージ作り。
更に解剖をして肉眼的な骨孔の位置や、縫合糸と周囲構成体の関係を確認。
尚且つ時間が残ったので、骨を縦割して断面を観察し、各骨孔の近接性を見てきました。


勉強になりましたね~。
朝9時から5時までが、あっという間に過ぎていきました。
間違いなく、今後の手術に生かせる知見を得られたと思います。


さて、今日は写真の紹介。
これが、本社の入り口です。意外とシンプル…
このあたりは大きな会社がたくさん集まっている地区で、すぐ隣は電機メーカーのフィリップスです。

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会社の中は、アメリカっぽいというか、やはりシンプルというか。
海外ドラマでよく見るオフィスとおんなじイメージです。

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でも、マーケティングの広告はたくさんありましたね。
エレベーターまでこんな感じ(^-^;)
これは、Dr. Clancyプロデュースの曲がるドリル。
スゲー欲しい!
近く日本に導入されるようなので、もし手に入るようになったら即買いだと思います。

IMG00391.jpg


会社の社員食堂(24時間営業っぽい)と同じメニューが、僕らにも毎日振る舞われました。
おかげで太ったかもしれません。。。


IMG00390.jpg



これは、廊下にあった広告。
『Give your patients custom-fit ACL』
イイ台詞ですね。
今後も、この精神を持って、一人一人の背景に合わせた手術をしていきたいと思います。

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トレーニング1日目 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

今日は、トレーニング1日目。
30分ほど郊外へ走った所にある、Smith & Nephew本社ビルのトレーニング施設にお伺いしました。
(そういえば、会社の写真とってなかったなぁ。。。明日撮ります)
トレーニング施設は、こんな感じ。

IMG00384.jpg


Cadaver膝が写っている写真は、さすがに自粛。。。(´ー`)y━~~
自分が普段やっている方法とはちょっと違ったAproachでの、Rectangular BTB ACL再建をやりました。
どっちがいいかというと、各々にメリット、デメリットがあるので何とも言えないのですが、
症例によっては使い分けてもいいのかな?と、思うような手術の出来栄えでした。
採用するかどうかは、もうちょっと熟考したいと考えてますけど。。。


共通のトレーニングではACL再建や半月板縫合を行ったのですが、空き時間は自主トレができます。
今日の自主練は、

① Transseptal aproachによる鏡視下手術
② ACLグラフトとしての大腿四頭筋腱採取
③ 鏡視下膝蓋骨下極切除

などなど。
①は、個人的にはそんなに重要とは考えていない(PCLをこれを使って再建するつもりはない。)のですが、
PCL付着部剥離骨折や、その他の外傷、腫瘍などで使う事があるかもしれないな、と思っています。
②についても、複数回のACL再損傷患者で使う可能性があるかな・・・くらい。
③は、難治性の膝蓋靱帯炎患者で適応があれば、ってとこですね。
でも、意外と患者さんはいると思っております。


パートナーがおり、自分一人で楽しむわけにもいかないので、内容を絞ってみました。
もちろん、内側、後方、外側の解剖もしっかりと。
全力で一日走りきったので、相当疲れました。


明日(日が変わって今日・・・)もう一日、トレーニングができる!
と、思うと嬉しい限り。
頑張ろう。

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Boston Cadaver training [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

水曜のAMに出国してから、13時間のフライトを経てボストンに着きました。
現地時間は水曜の夜ですが、日本時間では木曜のお昼前。
実は、飛行機の中で寝られるかと思い火曜日に徹夜をして飛行機に乗ったのですが、
飛行機がうるさくて思いのほか寝られず、うとうとしただけ。

そんな訳で、48時間以上寝てない計算になります(笑)
まぁ、このブログ書いたら速攻寝られるくらい、身体の疲労感はありますけど。


そんなわけで?時差ボケ解消と無駄な睡眠防止のため、今日はボストンの市内Joggingしてました。
古い街並みが残されていたのですが、煉瓦色で統一されていて、すごくキレイですよね。


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今回の宿泊は市街地から離れた所のホテルですが、
近くにかの有名なM.I.T(マサチューセッツ工科大学)があるので、とりあえずキャンパスに突入してみました。
なんか、天才とか優秀な人々が集まる大学ってイメージがあるんですけど。


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全ての建物には過去の偉い教授?の名前が付けられており、それだけでも雰囲気ありましたね。
中には訳のわからない芸術的な建物もあったりして。。。さすがUSA?です


IMG00374.jpg


大学内には病院もありました。
受付の人の話では、内科、外科、整形、泌尿器、小児科は常駐しているとの事。
とはいえ、午前11時までの受付で終了なんで、のんびりしたクリニックなんでしょうか!?
(ちなみに学生さんなら24時間の電話相談を受け付けているそうです)。


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明日からはSmith & Nehew本社にて屍体膝を使った手術トレーニング。
群馬の片田舎でも世界基準の手術が受けられるよう、努力してまいります。


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膝蓋腱(BTB)を用いたACL再建 最近の工夫 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

本っ当~~~に、お久しぶりなこのコーナー。
いろんなしがらみ!?もあって、ご無沙汰しておりました。
今日は、膝蓋腱(BTB)を用いたACL再建における最近の工夫を御紹介いたします。


もともと、BTB再建では比較的直径の大きな骨孔を開けなくてはなりません。
ハムストリング腱では5~7mm(シングルでは8~9mmの場合も・・・)であるのに対して、
BTBの場合には8~10mmになります。


図1.png


実際にBTB法で作成する大腿骨側の骨孔を関節内から見ると、こんな感じになります。
青丸で囲んだ部分が骨孔なのですが、この症例は直径が9mmです。

図2.png

ところが、最近僕が作っている大腿骨側の骨孔は、このような形をしています。

図3.png

・・・なんだか、四角いですね。
この大腿骨側の骨孔は円形ではなく、長辺10mm × 短辺6mmの長方形の骨孔なんです。
なんでこんな形をした穴を開けるかというと、下のBTB移植腱をご覧ください。

図4.png


BTBの腱は両端に骨がついており、四角い形をしているので、円筒形の骨孔に入れるより、
直方形の骨孔に入れる方が隙間が無く、よりタイトに入れられるわけです。
そうすると、移植靭帯と骨孔の癒合も早いんじゃないか!?、強いんじゃないか!?、というのが、
この方法のメリットです。
(あともう一つ、解剖学的な捻りを再現して再建できる、というメリットもあります)

これは、ACL再建をする人間で知らない人はいない、大阪の史野先生が考案された再建方法です。
(興味のある方は、こちらをご参照くださいませ)
⇒ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16325099
⇒ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21710294

CORRの方は再再建の論文ですが、シェーマがわかりやすく、
メリットなどについてもより詳細に記載されているのでご紹介いたしました。
実際、術後CTによる調査では骨癒合が優れていることが、最近の論文で発表されています。


どうやって四角い穴を作るのか!?
答えは意外とシンプルです。
まず、2本のワイヤーを等間隔に骨髄内に刺入します。

図5.png


このワイヤーをガイドにして、直径5~5.5mmのドリルを用いて、2本の骨孔を作成します。
すると、だるまさんのような形をした、2つの骨孔ができます。


図6.png


真ん中にあった削り残しの骨や軟部をある程度廓清したのちに、
10mm×6mmサイズの直方体の形をした、ダイレーターを打ち込んでいきます。
そうすると、2本のだるまさんトンネルが、1本の四角いトンネルになります。


図7.png


最後に、手作業で穴の形を仕上げると、直方形の骨孔が完成します。
なんとなく職人の香りがする部分で、個人的には宮大工っぽくって好きなところです。

図8.png

脛骨側も似たようなやり方で直方体の骨孔を作成して、靭帯を誘導し、設置します。
僕は脛骨側をスクリュー、大腿骨側はエンドボタンで固定しています。

図9.png

手技が煩雑であったり、靭帯を骨孔内に誘導する時にテクニックが必要だったり、
移植靭帯の作成が難しかったり、と、ハードルは高いのですが、
患者さんにとってもそれだけの価値がある、良い手術だと思います。
僕も初めてやった時には3時間近くかかりましたが、最近では1時間半弱くらいです。


人が足りない時には、看護婦さん相手に2人でやる時もあったりして・・・"(^_^;)"


5年前、ACL再建を始めた時には想像もしていなかった術式ですが、
常に医療の世界は進化し続けています。
自分のフィロソフィーにあった物を吟味し、必要に応じて柔軟に取り入れていく姿勢は、
常に持ち続けていきたいものですね。
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ACL再建における(個人的な)最近の傾向 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

ACL再建に手を出し始めて5年目になりますが、この5年でいろんな先生のエッセンスを取り入れたり、
勉強をして得た知識を吟味しながら、自分の考えに基づいた治療方針の決定や術式選択、
リハビリテーションの計画を立てられるようになってきました。
特に、去年の6月に移籍してからは、完全に自分のPhylosophyに基づいた治療をさせて頂いております。


とは言え自分の場合には、永遠の師匠である木村先生の哲学が根底なんですけどね!
師匠の下で教えて頂いていた3年間と、大学病院に戻っていた期間には、
第一選択としてハムストリング(ST)2ルートをチョイスし、
ニーズや症例に応じて膝蓋腱(BTB)のシングルを行うというスタンスを基本にしていました。


しかし、もともとハムストと比較してもBTBによるACL再建の成績は劣らず、復帰が早い事、
術式や採腱方法が洗練されてきた為に、術後の伸展制限や合併症が減少してきた事などを考慮し、
最近ではBTBを勧める患者さんが明らかに増えてきていますヾ(▽⌒*)


BTBを積極的に勧める条件としては・・・

①早期の復帰を求める患者や、退院後の生活負荷、就業負荷が高い患者
②アスリート(県大会上位~全国大会出場レベル以上)
③格闘技、スキー、コンタクトスポーツなどのスポーツをやっている人

でしょうか。


①、②、③は全て関連性があるんですけど、STは骨孔内で骨と腱が癒合すると言う事に対して、
BTBは骨孔内で骨と骨が癒合するという点で、より早く、より強く結合すると言う事が理由です。
まぁ、安心してリハビリが進められたり、ニーズによっては復帰を早める事ができるのでね。
・・・③については、無茶をしがちな患者さんが多いというのも、理由の一つかもね(笑)


だからと言って、術後早期の加速的なリハビリを行っているわけではありませんよ。
STは2週、BTBは1週前後の免荷をしっかり行い、可動域訓練についても慎重な方だと思います。
競技復帰についても基本的には10か月を目安とし、半月板損傷の有無、筋力の回復とニーズを考慮して、
復帰時期を決定しています。


あと、スポーツ種目によっても方針が違ってきますかね。
僕の場合、ジャンプ系の動きが多いスポーツでは膝蓋靱帯炎などの合併が怖い部分もありますので、
STの2ルートを第一選択としております。
受傷前からのジャンパー膝(膝蓋靱帯炎)の影響で、BTBの腱自体が変性しているケースも散見しますので。


まぁ、そんな事を考えながら再建をやった結果、ここ1年間のST/BTBの比はおおよそ6対4です。
ウチの病院はスポーツ選手だけでなく、主婦や部活レベルの中学生女子も多いので、
やはりSTが多いという結果にはなりましたが、それにしてもBTBが増えました。


しばらくは、このような傾向が続くのではないかと思っております。
明日以降、最近のBTBによるACL再建についてもご紹介したいのですが、なにしろヒマがなくて。。。
とにかく、頑張ってみますね。
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丸山選手は前十字靱帯断裂でしたか・・・ [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

昨日、なでしこの試合を見ていて、後半終了間際に起きたケガ。
左足でクロスを上げようとして後ろに倒れ込んだシーンの瞬間、

『あー、これはACLかもなぁ・・・』

と、日本全国のスポーツ・膝を専門とする整形外科医が感じたのではないかと思います。
テレビで見る限り、スパイラルの前方引き出し予防みたいなACLのテーピングをしてたしね。

まぁ、今から再建してリハビリすれば、ギリギリ本大会の頃には回復しているとは思いますが、
アピールの場を失ってしまったのは痛い!
でも、復帰に向かってやるしか道はないので、頑張ってほしいと思います。



今回は、ウォーミングアップ中にケガをして、その後メディカルスタッフからOKが出て試合に出たとの事ですが、
なんでメディカルは試合に出したんだ!?と、疑問に思う人もいるかもしれません。
それには、幾つかの要因が考えられます。

①受傷直後の関節内出血が無く、診断がつきにくかった
⇒そういうケースも時々あります。自分も関節血腫の無いACL損傷は何度か経験があります。

②膝関節不安定性がはっきりしなかった
⇒アスリートのように四頭筋が発達し、徒手検査時に筋肉の緊張が取れない場合、わかりにくい事が。

③アップ時に靱帯損傷をしていたのだが、滑膜下断裂だったため症状が出ていなかった
⇒なんとなく①とかぶるのですが。。。

④選手が本当の症状を伝えなかった
⇒選手のレベルが高くなればなるほど(試合直前ではなおの事)、こういうケースもありますよね。

⑤実際にあの瞬間に(初めて)ACLを損傷した。アップの出来事とは無関係
⇒可能性としては低いですが、全くあり得ない事ではないです。


女子代表という、いわば国のトップチームでもこんな出来事ってあるんだな~。
と、身につまされる思いでした。
自分もこのような出来事に遭遇する可能性もありますし、他人事では終われない一件でした。

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スキー選手のACL断裂に関して思う事 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

近年のスキー選手のACL断裂に関して、個人的に常々思う事は、

①ACL断裂発生の低年齢化
②SLのターン後半、または滑走から止まろうとした動作の中での断裂の増加
③GSの高速化に伴う、強い外力(外反強制や過伸展)によるACL断裂の増加

の3つですね。


①については、海外でも同様の傾向があるという話を聞いたことがあります。
(学会だったか、世間話だったか・・・きちんとした文献などが示せず申し訳ない)
特に谷回りにおいては、高い技術を持っていない選手でも(スキーに働きかけなくても)、
簡単に外力を受ける事ができるという事に由来するのかな、と思います。

②に関しては、前回の記事にあるPhantom foot injuryの形態ですね。
SLのセットの変化、SLスキーが持つラディウスが生み出す作用でしょう。
あとは、ターンが遅れた際のリカバリー動作でも、ポジションが後ろだと切れてしまう可能性があります。

③についても、レースの高速化に伴い転倒時に受けるエネルギーが強まることから、
ある意味当然な部分もあるでしょう。

あとは意外な盲点として、転倒後に斜面を流されたりする際にスキーが雪面に引っ掛かって下肢を捻られ、
ACLを損傷するというケースも多いように思います。
これもまた、スキーのラディウスが小さいほど起きやすい現象じゃないかと。


誤解を恐れずに言うと、アルペン競技によるACL断裂予防と言うのは、非常に難しいという印象です。
なぜなら、いくらアライメントを整えたり、防御因子となるハムストリングをトレーニングしても、
ルーティンの滑走動作ではない、突如起きうる異常なシチュエーションにおける、
瞬間での関節への大きな直達外力や、スキーから伝わる外力を防ぐことは難しいと思いますので。


もちろん、動作におけるアライメントの改善やコーディネーション能力の強化が、
ケガの発生と全く関連がないとは思いません。
僕も、膝から下を使った角付けや、回しこみ動作の強い選手は、膝のケガが多いと感じています。

そして、どの競技でも言えるのですが、
「ケガをしない為の滑り」と、「速く滑る為の滑り」「成績を出すための滑り」
が同じかどうかと言われると、正直僕にはわからないというのが現状ですので、
選手や指導者・家族に対して、そのあたりのコメントをする時には非常に慎重になります。


まぁ、ACLだけではなく膝のケガを減少させるためには、特にジュニア期の選手においては、
ゲート滑走時のラインを高くすると言うのがポイントかなと個人的には思っています。
そして、谷回りを早く作って速いタイミングで次の方向に抜け出していくような動きを身につけ、
②のような動きが発生するリスクをできるだけ少なくすることは、なんかの足しにはなるんじゃないかな?
谷回りを作るにも、下腿の回旋動作や上体の先行動作のような捻りの動きはあるだろうけど、
タイミングが遅れたり、身体が遅れてしまった結果、ターン後半で雪面からの外力を受けてできてしまった、
受動的な捻りの動きに比べたら、きっとケガのリスクは少ないはずですので。
もちろん、この滑りが成績の出る滑りかどうかという問題は、また別次元の話です。
(もちろん単純に、『ラインを高くしろ』という事が言いたいんじゃぁないんですけど)


もう一つは、前後のポジションを早い時期にしっかりと意識させ、良い位置を身につけさせること。
スキーのラディウスが小さくなればなるほど、前後方向の重心移動の許容量も小さくなりますし、
特にポジションや荷重のポイントが後ろに行けば行くほど、ケガ発生のリスクは高まるはずですしね。
こちらは、スキーの成績にもプラスになってくれることだと信じております。


そして、シナプスの成長が著しいジュニア期における各種コーディネーショントレーニングや、
異なったスポーツを体験する事の重要性、そして、不整地や新雪、ジャンプなどのフリースキーの重要性は、
今さら改めて話すつもりもありません。


最後に、自分の手術したスキー選手からの傾向をご紹介。


対象はここ4年間でOpeした19膝(男子7例8膝;1名再断裂、女子9例11膝;2名両側断裂)です。
中学生~大学生で、全国大会出場~FIS出場権利持ち以上のレベルに限定しました。
(高速系の経験が含まれる対象にしたつもりです)

<受傷種目>
SL;   9膝
GS;   6膝(うち、1名片ハン)
SG;   3膝
エアー; 1膝

フリースキー中の転倒も、そのターンの弧に合わせて種目を決めています。
やはり、SLが多いですね。SGも試合数の割にはかなり高い確率と言えるのではないでしょうか。
約1名は・・・遊んでた!?(笑)

<再建後の経過>
同レベルを維持し活動; 13例15膝
再建後2年以内に引退; 3例4膝(全例女性)

まぁ、進学や区切りで引退した選手も含まれますが・・・こんな感じです。

<ACL断裂リスクの有無>
狭い窩間顆;4例6膝
強い脛骨後方傾斜;1例1膝
過伸展膝;3例5膝

リスクの定義についてはいろいろとございますが、マニアックになりすぎるのであまりここでは述べません。
動きの中でのアライメントまでは全てデータがあるわけではないので、このくらいでご勘弁を。


余談ですが、もしこの記事を読んで頂いたスキー関係の指導者・トレーナーの方で、
『疑問に答えてあげるよ!』
と言う方がいたら、ぜひお話をさせて頂く機会を頂ければありがたいです。
今、スキー関連で一番勉強したい疑問の一つです。
全国どこでもお伺いしますので、何卒よろしくお願いいたします(笑)
あと、今回の記事でスキーに関する理解の間違いなどがあった時にも、ご指摘くださいませヾ(_ _。)


こんなこと書いてる瞬間にも、ACLの治療は進歩しています。
さっき、これ読んでました。
⇒ http://ajs.sagepub.com/content/39/8/1615.abstract

。。。やっぱ、ハムストリングを用いた再建は、2ルートじゃなくちゃダメなんだろうな。
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