ACL損傷集中講座 1コマ目 【ACLとは】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]
今日からしばらくの間、膝前十字靭帯損傷について集中的に書いてみようと思います。
俺が医師となり、整形外科に入局し、膝関節を専門にしているのは、スキーと関わっていた中で周囲の人間に膝前十字靭帯(以下ACL)損傷が多かったというのが、かなり影響しています。
残念ではありますが、それほどスキーにおけるACL損傷の割合は高いと言えます。選手にとってはケガをしないことが一番であると思いますが、ケガに対する正しい知識を知っておく事も大切です。
そして、15年前に比べ、カービングスキーの出現によってACL損傷の頻度は格段に増加しました。
昔はACL損傷と言えばトップレベルの選手に多く、受傷機転もスピード系種目における転倒やジャンプの着地失敗による断裂が中心だったのに対して、現在では各種目の高速化が進むと共に、ターンにおける外力が大きくなってきたこともあり、種目やレベルを問わず、様々なシチュエーションでの受傷パターンが増えています。
今回は、スキー選手におけるACL損傷を中心に、元スキー選手としての視点から、基礎知識、治療、リハビリ、競技復帰などについての情報をシリーズで連載していくつもりです。
このページを読んで下さる方々が、ケガをする事無くスキーに取り組んで頂ける事を祈りつつ、記事を書き進めたいと思います。
<ACLとは>
まずは膝関節の解剖です。
ACLはどこにあるのでしょうか!?
写真は膝を正面から見ており、右が内側、左が外側です。
ACLは膝関節の中央で、内側前方から外側後方へ向かって走行する太い靭帯です。
1本の靭帯ですがAM束とPL束という2本の繊維が寄り合わさってできています。
(写真で言うと、ACLの真ん中に引いた赤いラインの左がPL束、右がAM束です)
余談ですが、最近は解剖学的なACL再建を目指して、
腱2本をそれぞれ別のトンネルに通す方法=2root法を行っている施設が多いのです。
機能としては、この2本がそれぞれ
①膝関節における脛骨前方移動の抑制(主にAM束)
②膝関節における脛骨回旋運動の抑制(主にPL束)
の役割を主に果たしています。
下腿が回ったり、前方に抜けないようにしているというわけです。
ですので、ACL損傷を起こすと、日常生活やスポーツ動作に伴って
膝崩れ(giving way)や、捻り動作に対する不安感・不安定感を訴えます。
これが、ACL(機能)不全と呼ばれる状態です。
また、ACLには“膝関節がどのくらい曲がっているか(位置覚)”とか、
“膝関節が動いた(運動覚)”ということを感じる感覚があります。
これらは総称して、proprioceptionと呼ばれています。
要するに、ACL不全があると、
「目をつぶって膝を90度に曲げてください」と言われても、うまくその角度が認識できなくなったり、目をつぶっている間に膝を動かされても、動かされている事に気がつきにくくなると言う事ですね。
これは、運動選手にとってはかなりの痛手です。
しかしACLを再建してやると、これらの機能も徐々に回復すると言われています。
~つづく~
※本記事内に掲載された文章および写真の無断転載を禁じます
コメント
by お名前(必須) (2015-04-04 20:05)