ACL損傷集中講座 9コマ目 【リハビリテーション】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]
さて、今日はリハビリのお話。
各病院によって、荷重の時期、細かい内容は異なりますが、
これはあまり気にしなくて良いように思います。
大まかには
・可動域の獲得
・筋力強化
の、2つが大きな目的になります。
今日は、経時的な視点からリハビリテーションの紹介をしていきます。
ちなみに、当院では
術直後~術後1週;膝可動域訓練のみ
術後1週~術後2週;リハビリテーション開始
術後2週;1/3荷重歩行開始
術後3週;1/2荷重歩行開始
術後4週;全荷重
術後6~8週;装具off
といった感じでやっています。
それでは、簡単にリハビリの流れや種類をみていきましょう。
<術翌日より>
・膝関節持続他動的可動訓練
(Continuous Passive Motion=CPM)
これは術後2~3週間ほど行っています。
下の写真のような機械に下肢を乗せ、膝の曲げ伸ばしを他動的に行います。
術後1週間は過度の負荷を避け、可動域訓練だけにしています
<術後1週より>
・動的関節制動訓練
(Dynamic Joint Control Training=DYJOCトレーニング)
これは、入院中はもちろん、自宅に帰っても大切になります。
足部には圧力などを感じる受容器が多く、ここからの信号が感覚となって情報として伝わり、
膝だけでなく下肢の運動の助けとなります。
いわゆる、コーディネーショントレーニングの一部と考えていただいても宜しいかと思います。
これは、タオルを足でひきつけたり、伸ばしたりしているところです。
これは、不安定な板の上でバランスを取り、受容器を刺激しているところです。
最初のうちは椅子に座っていますが、慣れてきたら立位でも行います。
これ以外にも、足の指を使ってビー玉を掴んだりするのも、メジャーな方法ですね。
アメリカで行われたACL損傷予防を目的とした研究で、
筋力訓練と比べても同等以上の効果を示しているほど、素晴らしいリハビリです。
地味な動きですが馬鹿にせず、集中してやりましょう。
・チューブトレーニング(筋力訓練)
コーディネーション能力の獲得も重要ですが、筋力も再獲得しなくてはなりません。
軽い負荷をかけつつ、大腿四頭筋、ハムストリング、前脛骨筋などの筋力をつけて行きます。
これはハムストリングのトレーニング。
こちらは、腓腹筋(ふくらはぎ)のトレーニングですね。
やはり、早期にはスクワット等の過度の負荷はかけられませんので、
こういった軽い抵抗を使ってトレーニングする事が大切です。
<術後2週(荷重許可後)より>
カーフレイズなどの、荷重を要する筋力訓練を開始すると共に、
DYJOCトレーニングも立位で行っていきます。
オーバーロードになると、膝関節水腫(膝の腫れ)が出現するので、注意が必要です。
<術後3週以降>
ハーフスクワット、Backward walking(後ろ歩き)、Air chair(空気椅子)などが始まります。
筋力訓練の負荷がどんどん上がってきます。
ポイントとしては、大腿四頭筋、ハムストリング共にまんべんなくトレーニングする事でしょう。
再建に用いた腱についても意識して、筋力低下を防いでください。
後ろ歩きと空気椅子の画像を紹介します。
こんな感じで、リハビリは進んでいきます。
4週の時点で屈曲120度程度が可動域の目標ですね。
私の場合は、その後月に一度の診察を行い、2ヶ月以降はCybexという機械で
毎回筋力測定を行い、スポーツ復帰の目安としています。
患側/健側比が
60~70%(術後4ヶ月頃);Jog許可
80~90%(術後6ヶ月頃);ダッシュ、縄跳び等の運動許可
8~12ヶ月で完全スポーツ復帰
ってゆう感じでしょうか。
~つづく~
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はじめまして。
simimasa先生のブログ
すごく参考にさせていただいています。
私は一昨年の冬にスキーで関節内と外側側副靭帯を
剥離骨折して以来
毎日がリハビリ・・・の生活です。
拘縮が残ってしまって、けっこう大変です。
ACL損傷は、先生の技術+患者の理解と努力が
大事な病気(?)だと思います。
(って・・・こんなことになってから気づいたのですが)
これからも、がんばってください!
by miotaro (2008-02-14 13:50)
拘縮ですか・・・
miotaroさんのご苦労、お察しいたします。
技術を磨くだけでなく、患者さんへ分かりやすい説明を欠かさぬよう、
今後も頑張っていこうと思います!
by simimasa (2008-02-15 19:31)
2月14日前十字靭帯再建手術と半月板縫合終了しました。
すばらしい先生に手術していただき感謝しております。
リハビリの計画を作りたいのですが、アドバイスありましたらよろしくお願いします。
by M (2008-02-16 13:31)
無事に終わって何よりです。
術後4週間程度は、とにかくオーバーロードにならないよう心がけるのが良いかと思います。(各病院によって、リハメニューは異なりますが、入院された病院での指示に従っていただいて問題ないと思います)
若年である事と、再建靭帯の保護と言う意味からは、ハムストリングをしっかりと鍛えていただく事が重要になります。
あとは、Jrの場合術後2~3ヶ月以降である程度の動きが許可になれば、コーディネーショントレーニングを多めに入れていくとより効果的かと・・・
by simimasa (2008-02-17 22:21)