アイスバケツチャレンジ

最近、世界中のセレブを巻き込んでブームとなっている、
「ALS アイスバケツチャレンジ」
というものがあります。
僕自身もFacebookでいろんな友人や著名人が氷水をかぶっているのを見ることが多いです。


⇒　https://www.facebook.com/photo.php?v=814266718604785&set=vb.192900374074759&type=2&theater


このチャレンジのルールを簡単にご説明しますと、
指名された人間は24時間以内に100ドルをALS協会に寄付するか、氷水を頭からかぶるかを選択し、
そのどちらかを実行に移してソーシャルメディアに投稿するというもの。
最後に次のチャレンジを行う3人を指名し、その環がどんどん広がっていく…という趣旨です。
実際、寄付を選択する方も、氷水をかぶる動画をUpすることが多いようですね。


ALS（筋萎縮性側索硬化症）というのは、外傷などの契機がなく運動神経の麻痺が起こり、
それが徐々に進行していくことで四肢や体幹の筋力が低下することで生活動作ができなくなる上に、
最終的には呼吸筋の麻痺をきたすことで自発呼吸が停止してしまうという難病です。
神経のタンパク質や細胞のミトコンドリアに異常があることがわかっていますが、
病気の進行は速く、根治に至る治療法も確立されていません。


そして、整形外科医にとっては以外に身近な疾患です。
頚椎症性脊髄症の診断を付ける場合には鑑別の上では必ず考えなくてはいけませんし、
筋力低下の患者さんを診察する時にも、注意を払うべき疾患です。
研修医の時に教えられた「ALSの陰性兆候」というのは、今でもはっきりと覚えています。
（膀胱直腸障害、感覚障害、眼球運動麻痺、など）


このアイスチャレンジの趣旨は、そんなALSという病気を世間に良く知ってほしいということと、
その研究に寄付を多くして欲しい、というものだそうです。
ただ、いろんな動画を見ていて、本当にこの趣旨をしっかりと説明し、
ALSという疾患や患者さんに対するメッセージ・コメントを伝えるような動画は殆ど無いな、
氷水をかぶるリアクションを見せるだけというものが多いなぁ。。。というのが個人的な感想です。


ALSという病気を知る者にとっては、これは非常にシリアスな疾患というのを知っているだけに、
ブームというか、お祭り騒ぎ的な盛り上がりを示しているところに関しては、違和感を感じます。
ただ、このチャレンジの意義とチャリティーという行為自体は非常に素晴らしいものだと思うので、
「その本当の意義を理解した上で心から賛同する人々によって」
ALS以外にもいろいろな分野に対するチャリティーというものが広まってくれるといいな、
と、思います。