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ACL部分再建 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

しばらく間が空きましたけど・・・今日は久々にACLのお話です。

先日のJOSKASでは、ACL部分再建や遺残組織を残した再建が広まってきたな、という印象を受けました。
僕自身は3年ほど前に、広島大学の越智先生が群馬で講演をされたのをきっかけに勉強を始めて、
手術マネージメントにおいて一つの選択枝となった手術です。
ここ3年でボク自身の件数もだいぶ増え、この4か月でも半分近くの症例がこの手技を使った再建をしています。


この術式のメリットとしては、部分的に残っている靭帯および滑膜組織を残して再建する事で。。。

①再建靭帯に対する血流の改善がより良好であると期待される
②遺残ACL表面のメカノレセプターが温存され、術後膝関節位置覚の改善が、より良好になる可能性がある

という事が期待されており、実際にそのような結果を示した論文もすでに出ています。
⇒越智先生 ACL部分再建2年成績

この術式を選択するうえで、どうしても心配になる事が、
「遺残靭帯組織がどれだけ機能しているのか?」
という事なんですが、僕の場合にはそれなりに太い(直径7~8mm以上)移植靭帯を挿入する事で、
仮に遺残靭帯が機能が不十分だったとしても、十分に対応できると考えています。


ここまでを読むと、2本の靭帯繊維がきちんと再建されていないのではないかと疑問に感じる人も多いかと思います。
しかし、近年の”解剖学的な“ハムストリング&BTB1ルート再建は非常にいい成績を示しており、
2ルート再建との成績比較でも、決して劣らない結果を出しています。

ですので、個人的には必ずしもすべての症例で2ルートの再建をするべきとは考えていません。
この考えのバックグラウンドには成績比較だとかバイオメカニカルなTopicsが絡んでくるので、
そのうち紹介できればと思います。


話がだいぶそれました。
最後に、写真を紹介してみようと思います。
この症例は、スポーツ時の膝崩れを主訴に来院された患者さん。
術前のTelosX-pでは左右差が4mmでしたが、再建直前の麻酔下における徒手検査では、
回旋不安定性が強い割には、ラックマンテストでエンドポイントがしっかりある患者さんでした。

手洗いをしながら、
『これは(部分再建)あるよ~!』
と、話していましたが、関節鏡視所見では・・・

図1.jpg

かろうじて整形外科膝関節課 課長の威厳が保たれました(笑)
一見、靭帯は連続性がありますが、AM束(緑線)と比べ、PL束(赤線)では大腿骨側で損傷があります。
わかりにくい方は、次の画像を。

図2.jpg

PL側の大腿骨部(右側です)は繊維が断裂していますね。
残った繊維を傷つけないように、脛骨側、大腿骨側共に関節外から解剖学的位置に骨孔を作成します。

図3.jpg

最後に、移植靭帯を挿入して終了となります。
この症例では残っていたAM束を温存し、PL束のみを直径8mmの半腱様筋腱を用いて再建しました。

図4.jpg


術後リハビリテーションは、通常の再建と同様になります。


最近、画像を勝手にパクる人間がいることが判明しました。
きちんとメールをくれて使用許可に関して断りを入れてくださる方もいらっしゃるにも関らず。。。⊂ ‘Д´)つ =3
そんな訳で、今回から必要性があるような写真に限っては、著作権を入れさせて頂きます。
少々見にくいのですが、ご容赦くださいm(_ _)m
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コメント 5

ask

勉強になります。
PL側の損傷だけでも膝崩れが起きてしまうんですね。
by ask (2010-08-18 21:39) 

simimasa

膝崩れは前方不安定性というより、回旋不安定性による要素が強いようですね。

ラックマンは多少ゆるくてもガチっと止まり、その割には回旋がグラグラな症例は、このような断裂のパターンがかなり多いです。回旋不安定性を有する事からMMの断裂を伴っていることが多く、私が経験した症例の半数以上に合併していました。

私もACL再建を始めてから1年ほどはテクニカルな問題でなかなかできなかったのですが、大腿骨側をFermedial portalやOutside-inで開けるようになってから、靭帯の温存がより簡単になり、こういった部分再建の症例が増えました。

確か、去年のAAOSでもピッツバーグのFu先生が、PL束のみの断裂に対する部分再建の発表をしていらっしゃいましたね。

by simimasa (2010-08-19 08:11) 

こっ

ACLの部分損傷について質問です。
数年前に再建した方の膝を少し前に捻ってしまいました。
半月板を損傷しロッキングしてしまっていたため先日関節鏡手術を受けました。その時に再建靭帯の一部が断裂している事が判明しました。主治医の先生は2、3割切れていると言っていましたが、バスケなどのスポーツをする上でどのような影響が考えられますか?主治医の先生からは特にそれ以上の説明もなく、とても軽い感じで話していましたが、大した影響はないと考えて良いのでしょうか?
唐突な質問で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
by こっ (2016-08-20 23:44) 

simimasa

僕個人としては再建ACLに限らず、もともとのACLについても部分損傷については、結構厳しい目で評価しています。「靭帯はつながっていても、安定性が損なわれている」という状況が往々にして有りますので。。。
膝崩れ感や不安定感などの患者自覚症状がある場合にはACL機能不全と判断して再建(再再建)手術をおすすめしていますし、半月板断裂がある場合にも、
【半月板に対するストレスが生じる状況≒靭帯の機能不全がある可能性が高い】
と考え、再建手術を視野に入れて経過を診ております。この考えについては、一般的な考えよりはかなり厳しめ?の考えであり、僕自身もそこまでシビアに評価することの意義については答えが出ていませんので、あくまで参考まで…ッて感じです。

膝崩れや不安定感の自覚がほとんどなければ、スポーツへの影響はかなり少ないというのが、個人的な臨床経験からの御質問に対する回答になりますね。
by simimasa (2016-08-24 07:53) 

こっ

ありがとうございますm(__)m

不安定性について現在の所、はっきりとした事は言えませんが、時々膝が過伸展した様な変な感覚があります。これは膝崩れとは別のものでしょうか?
まだまだスポーツを続けたいと思っていますが、実際スポーツ復帰した時に膝崩れが起きないか不安です。

by こっ (2016-08-24 23:45) 

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