世界トップレベルのスキー選手における、ACL損傷の実際② [膝前十字靭帯(ACL)損傷]
さて、前回の記事(http://corticalscrew.blog.so-net.ne.jp/2011-08-17)の続きです。
今日は、論文のDiscussion内容の紹介や、論文に対する感想を述べてみます
過去、一般スキーヤーのACL損傷発生率を記した論文では、
男性4.2件/100000 Skiers day、女性4.4件/100000 Skiers dayと言う報告があり、
単位は全く異なる事を加味しても、明らかにアルペンレーサーのACL断裂率は高いという事がわかります。
これは、競技性質や受傷機転、皆さんの経験などからも、異論はない所かと。
あとは、ACL損傷受傷機転の解説や、選手にとっては早期の治療(ACL再建)が必須である事、
大腿骨や脛骨の骨格形態(大腿骨窩間部の広さ、脛骨関節面の後方傾斜)が発生に関与する事、
コンピューターモデルにてビンディングの精度向上がケガ防止につながるという報告がある事、
などが考察にて述べられておりました。
そして、適切な診断と治療を行えば、世界トップクラスのスキー選手であっても、
膝関節の完全な機能を再獲得して、トップシーンへの復帰が可能であるだろう!
というのが、考察の締めの一文でした。
ちなみに、彼らの論文で紹介している、というか、一般的なスキーにおけるACL損傷の受傷機転は、次の5つ。
①Boot-induced anterior drawer
⇒スキーブーツによる下腿の前方引き出し、いわゆる「ゼンジュー」ポジション
②Valgus-external rotation
⇒膝の外反強制(X脚様の肢位強制)による受傷
③(下腿の)Internal rotation and extension
⇒膝過伸展および下腿の内旋強制による受傷
④Forceful quadriceps muscle contraction
⇒大腿四頭筋の強い単独収縮が一瞬で起き、膝が進展して受傷。
(これはHamstの防御収縮が起きなかったケースだと理解してるんだけど。。。間違ってたらご指摘ください)
⑤Phantom-foot injury
⇒ターンの後半で上体が遅れてスキーだけが前方に走り、「発射」してしまうような動き
です。
詳しい事はまたいつかお話できると良いのですが。。。ちょっと論文の本質から外れるのでこのへんで。
もうちょっと詳しく知りたい方には、
http://www.ski-injury.com/
あたりをご覧になると、もう少し詳細に掲載されてますよ。
個人的に気になったことを何点か挙げてみます。
まずは全体的に、結果と考察がもう少しリンクすると面白かったという印象が。。。
もともとの骨形態による発症リスクや、受傷機転関連の話と言うのは既に一般的な理解なんで、
いまさらそれを書かれても何の面白味もないし、結果で関連するデータが示されているわけでもないので、
正直な所、あまり興味をそそるDiscussionではありませんでした。
また、80~90年代の技術&マテリアルと、2000年代のそれでは全てが大きく違います。
そういったものに関連する記述や考察がなかったというのは、ちょっと残念。
女性の発症率が変わらないのに、男性の発症率が増加している事や、
再断裂率&対側損傷率を年代ごと、ってゆうか、カービングスキー出現前後で比較したような、
時間軸での評価が見てみたかったですね。
(おそらく・・・受傷機転や技術系/高速系を比較した断裂発生率のデータでは、差が出そうな気がします)
あとは、本文中にしかなかった結果の記載だったのですが、
ACL断裂の時点で選手生命にピリオドを打った人数は、Top30群では発症例数総数の10%だったそうです。
ACL断裂患者のキャリア年数もさることながら、再建後の経過というのも非常に気になりますね。
術後何年間、Top30のレベル、またはナショナルチームのレベルを維持できたのか?
またはどのくらいの人数が、どのくらいの時期でドロップアウトしたのか?
逆に、ACL再建後の患者が、どのくらいの割合で術後Top30まで上がってこれたのか?
と言うデータが見てみたいです。
フランススキー連盟と言う、アルペン界では非常に大きなグループを巻き込んだ、
しかも非常に長期に渡る、貴重なデータですので、もう少しいろんなエッセンスを覗いてみたいなぁ。
このデータ収集の体制や、そのベースにある医科学サポートの体制、本当に素晴らしいです。
なんか、まとまりのない記事になってしまいました。
明日は、これを読んでの個人的感想及び、個人的経験からのコメントを紹介できればな、と思っています。
今日は、論文のDiscussion内容の紹介や、論文に対する感想を述べてみます
過去、一般スキーヤーのACL損傷発生率を記した論文では、
男性4.2件/100000 Skiers day、女性4.4件/100000 Skiers dayと言う報告があり、
単位は全く異なる事を加味しても、明らかにアルペンレーサーのACL断裂率は高いという事がわかります。
これは、競技性質や受傷機転、皆さんの経験などからも、異論はない所かと。
あとは、ACL損傷受傷機転の解説や、選手にとっては早期の治療(ACL再建)が必須である事、
大腿骨や脛骨の骨格形態(大腿骨窩間部の広さ、脛骨関節面の後方傾斜)が発生に関与する事、
コンピューターモデルにてビンディングの精度向上がケガ防止につながるという報告がある事、
などが考察にて述べられておりました。
そして、適切な診断と治療を行えば、世界トップクラスのスキー選手であっても、
膝関節の完全な機能を再獲得して、トップシーンへの復帰が可能であるだろう!
というのが、考察の締めの一文でした。
ちなみに、彼らの論文で紹介している、というか、一般的なスキーにおけるACL損傷の受傷機転は、次の5つ。
①Boot-induced anterior drawer
⇒スキーブーツによる下腿の前方引き出し、いわゆる「ゼンジュー」ポジション
②Valgus-external rotation
⇒膝の外反強制(X脚様の肢位強制)による受傷
③(下腿の)Internal rotation and extension
⇒膝過伸展および下腿の内旋強制による受傷
④Forceful quadriceps muscle contraction
⇒大腿四頭筋の強い単独収縮が一瞬で起き、膝が進展して受傷。
(これはHamstの防御収縮が起きなかったケースだと理解してるんだけど。。。間違ってたらご指摘ください)
⑤Phantom-foot injury
⇒ターンの後半で上体が遅れてスキーだけが前方に走り、「発射」してしまうような動き
です。
詳しい事はまたいつかお話できると良いのですが。。。ちょっと論文の本質から外れるのでこのへんで。
もうちょっと詳しく知りたい方には、
http://www.ski-injury.com/
あたりをご覧になると、もう少し詳細に掲載されてますよ。
個人的に気になったことを何点か挙げてみます。
まずは全体的に、結果と考察がもう少しリンクすると面白かったという印象が。。。
もともとの骨形態による発症リスクや、受傷機転関連の話と言うのは既に一般的な理解なんで、
いまさらそれを書かれても何の面白味もないし、結果で関連するデータが示されているわけでもないので、
正直な所、あまり興味をそそるDiscussionではありませんでした。
また、80~90年代の技術&マテリアルと、2000年代のそれでは全てが大きく違います。
そういったものに関連する記述や考察がなかったというのは、ちょっと残念。
女性の発症率が変わらないのに、男性の発症率が増加している事や、
再断裂率&対側損傷率を年代ごと、ってゆうか、カービングスキー出現前後で比較したような、
時間軸での評価が見てみたかったですね。
(おそらく・・・受傷機転や技術系/高速系を比較した断裂発生率のデータでは、差が出そうな気がします)
あとは、本文中にしかなかった結果の記載だったのですが、
ACL断裂の時点で選手生命にピリオドを打った人数は、Top30群では発症例数総数の10%だったそうです。
ACL断裂患者のキャリア年数もさることながら、再建後の経過というのも非常に気になりますね。
術後何年間、Top30のレベル、またはナショナルチームのレベルを維持できたのか?
またはどのくらいの人数が、どのくらいの時期でドロップアウトしたのか?
逆に、ACL再建後の患者が、どのくらいの割合で術後Top30まで上がってこれたのか?
と言うデータが見てみたいです。
フランススキー連盟と言う、アルペン界では非常に大きなグループを巻き込んだ、
しかも非常に長期に渡る、貴重なデータですので、もう少しいろんなエッセンスを覗いてみたいなぁ。
このデータ収集の体制や、そのベースにある医科学サポートの体制、本当に素晴らしいです。
なんか、まとまりのない記事になってしまいました。
明日は、これを読んでの個人的感想及び、個人的経験からのコメントを紹介できればな、と思っています。
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