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膝蓋腱(BTB)を用いたACL再建 最近の工夫 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

本っ当~~~に、お久しぶりなこのコーナー。
いろんなしがらみ!?もあって、ご無沙汰しておりました。
今日は、膝蓋腱(BTB)を用いたACL再建における最近の工夫を御紹介いたします。


もともと、BTB再建では比較的直径の大きな骨孔を開けなくてはなりません。
ハムストリング腱では5~7mm(シングルでは8~9mmの場合も・・・)であるのに対して、
BTBの場合には8~10mmになります。


図1.png


実際にBTB法で作成する大腿骨側の骨孔を関節内から見ると、こんな感じになります。
青丸で囲んだ部分が骨孔なのですが、この症例は直径が9mmです。

図2.png

ところが、最近僕が作っている大腿骨側の骨孔は、このような形をしています。

図3.png

・・・なんだか、四角いですね。
この大腿骨側の骨孔は円形ではなく、長辺10mm × 短辺6mmの長方形の骨孔なんです。
なんでこんな形をした穴を開けるかというと、下のBTB移植腱をご覧ください。

図4.png


BTBの腱は両端に骨がついており、四角い形をしているので、円筒形の骨孔に入れるより、
直方形の骨孔に入れる方が隙間が無く、よりタイトに入れられるわけです。
そうすると、移植靭帯と骨孔の癒合も早いんじゃないか!?、強いんじゃないか!?、というのが、
この方法のメリットです。
(あともう一つ、解剖学的な捻りを再現して再建できる、というメリットもあります)

これは、ACL再建をする人間で知らない人はいない、大阪の史野先生が考案された再建方法です。
(興味のある方は、こちらをご参照くださいませ)
⇒ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16325099
⇒ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21710294

CORRの方は再再建の論文ですが、シェーマがわかりやすく、
メリットなどについてもより詳細に記載されているのでご紹介いたしました。
実際、術後CTによる調査では骨癒合が優れていることが、最近の論文で発表されています。


どうやって四角い穴を作るのか!?
答えは意外とシンプルです。
まず、2本のワイヤーを等間隔に骨髄内に刺入します。

図5.png


このワイヤーをガイドにして、直径5~5.5mmのドリルを用いて、2本の骨孔を作成します。
すると、だるまさんのような形をした、2つの骨孔ができます。


図6.png


真ん中にあった削り残しの骨や軟部をある程度廓清したのちに、
10mm×6mmサイズの直方体の形をした、ダイレーターを打ち込んでいきます。
そうすると、2本のだるまさんトンネルが、1本の四角いトンネルになります。


図7.png


最後に、手作業で穴の形を仕上げると、直方形の骨孔が完成します。
なんとなく職人の香りがする部分で、個人的には宮大工っぽくって好きなところです。

図8.png

脛骨側も似たようなやり方で直方体の骨孔を作成して、靭帯を誘導し、設置します。
僕は脛骨側をスクリュー、大腿骨側はエンドボタンで固定しています。

図9.png

手技が煩雑であったり、靭帯を骨孔内に誘導する時にテクニックが必要だったり、
移植靭帯の作成が難しかったり、と、ハードルは高いのですが、
患者さんにとってもそれだけの価値がある、良い手術だと思います。
僕も初めてやった時には3時間近くかかりましたが、最近では1時間半弱くらいです。


人が足りない時には、看護婦さん相手に2人でやる時もあったりして・・・"(^_^;)"


5年前、ACL再建を始めた時には想像もしていなかった術式ですが、
常に医療の世界は進化し続けています。
自分のフィロソフィーにあった物を吟味し、必要に応じて柔軟に取り入れていく姿勢は、
常に持ち続けていきたいものですね。
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コメント 7

ハヤママ

先生、初めまして。
膝の事で質問させてください。
7月1日に、バスケの試合中、方向転換で軽く左膝を捻りました。痛みは軽く、テーピングでまた試合に出ましたが、すぐに膝がずれる感じで…その後3回ほどずれました。この日は、さすがに試合に出るのはやめました。
半月板を痛めたなっと思いましたが、次の日は腫れて、痛みもあり、病院に行ったところ血が溜まっていました。お医者さんは、半月板の単独損傷ならば、こんなに血はたまらないから、前十字靭帯もやってる可能性があるといっていました。
半月板の損傷だけなら、血はあまり溜まらないものですか?

こんな唐突な質問で失礼ですが、ヨロシクお願いします。
by ハヤママ (2012-07-04 08:48) 

simimasa

⇒ハヤママさま
関節内の血腫は、靱帯損傷の可能性が非常に高いと思います。
ただ、半月板の広範囲断裂(関節包付着部での縦断裂)などでも血腫がたまる事もありますので、一概に血腫=靱帯断裂とは言えません。

ただ、外来をやっているとそういったスポーツ外傷で関節血腫がある場合には、受診された先生がおっしゃる通り、靱帯損傷の可能性が非常に高いです。僕も関節血腫の場合にはまず靭帯や骨折を疑ってかかります。半月板損傷の場合も無いわけではないのですが、頻度としては非常に少ないというのが個人的なインプレッションです。


by simimasa (2012-07-04 14:27) 

ハヤママ

先生、ありがとうございます。
右膝はすでに再建済みなので…今回、左膝も靭帯の可能性があるとなると、あれこれと思いだし、気が滅入ります。
今回、診て頂いている先生からMRIを進められましたが、事実を知るのが怖くて断ってしまいましたが…やっぱり、とった方が良いですよね。
次回、受診したときに相談してきます。
ありがとうございました。
by ハヤママ (2012-07-04 15:15) 

ハヤママ

先生こんばんは。
その後の膝の状態を報告します(^^)
怪我から1ヶ月が過ぎましたが、バスケ中に膝崩れを何度か経験し…今日、ようやく2度目の診察を受けてきました。
やはり、前十字靭帯は切れてるみたいです…。
何歳になっても、この宣告は悲しいですね。かなり動揺して、今は今後の事は考えられません…。
早く、前向きになれるように頑張ります…。
by ハヤママ (2012-08-04 23:45) 

simimasa

⇒ハヤママ様
そうですか・・・それは本当に残念です。
でも、やるしかありません。
前向きに治療に取り組めるよう、頑張ってください!

by simimasa (2012-08-05 23:02) 

ハヤママ

先生こんばんは。
やっと、手術の決心をしました。
10月26日に…。
先日、懲りずにバスケをしてゴリッとやってしまって…またまた血がたまりました…。
さすがに、これ以上はと思い決心しました。
まだ、先ですが前に進まなくては…。
今回は何の損傷の血がたまったのでしょうかね(- -;)
早く、元気にバスケがしたいです!!
by ハヤママ (2012-08-24 20:00) 

simimasa

怖さはあると思いますけど、しっかり手術をすれば、またバスケができるようになりますから、復帰を目指して頑張ってくださいね!

また血がたまったのは・・・残っていた靭帯が完全に切れたというパターンが多いです(^_^;)

by simimasa (2012-08-26 07:35) 

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