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ACL損傷についてもっと知りたい皆様へ [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

最近、こういったページがあるのを初めて知って、やたら驚きました!

前十字靱帯(ACL)診療ガイドライン

これは、日本整形外科学会が作成した、ACL損傷に対するガイドラインです。
(僕も本を買いました!結構高かったんだよなぁ・・・)
ACLの基本から治療、リハビリまでをQ&Aで解説を加えると共に、各種論文も紹介しています。
少し難しい点もあるかとは存じますが、その分ほとんどの方の疑問には答えられるはずです。

厚生省の補助を受けて公開しているページらしいのですが・・・
こんなページがあるとは思いませんでした!

これなら、わざわざ自分で記事を書く必要は無かったかな (ノ_<。)

ACL損傷に興味がある皆様は、是非ご一読を。
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ACL損傷集中講座 11コマ目 【最後に】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

長らく連載を続けたACL損傷集中講座ですが、今回が最終回となります。
今日は、私見や雑談を。。。

私が考える、スキー選手に必要な膝の機能というのは、
膝回旋運動の制動≧膝前方安定性
かと思います。

ですので、スキー選手に対してはBTB法による1ルート再建よりも
半腱様筋(ST)を用いた2ルート再建術によって回旋制動性もしっかり抑えてやる事
が、より大切だと(今のところは)考えています。

(ただ、BTBで解剖学的に再建する方法であれば、その限りではありません)

私が知る限りでの、スキー関連で御高名な先生方の考え方も紹介します。
日本鋼管の栗山先生(オリンピックチームドクター)は、僕と同じような考え方をされていました。
STをメインの方法とし、薄筋腱は可及的に温存していらっしゃるようです。
船橋整形、北大、阪大、医科歯科、そして群大も同様の方法です。

また、都立青山の山岸先生は
「スキー選手のハムストリングは温存するべきだ!」
という考えの下、主としてBTB法の手術を行っておられました。
旭川の進藤先生も同じような考えとお聞きした事があります(違ってたら申し訳ございません)。

そして、関東労災の内山先生は・・・
残念ながらよくわかりません。確かSTGがメインであったと思います。
なにしろお忙しいせいか、ご本人と学会場でお会いした事がないんですよね。
今度機会があれば、詳しくお聞きしてみたいものです。

ACL再建というのは、どういった方法を選んでもそれなりに良い成績を得られる手術であると
思いますので、その結果に至るまでの考え方がしっかり構築されておられる先生の下で
手術を受けていただければ、どこの病院でも、満足のいく結果が得られると思います。


あとは雑談になってしまうのですが、個人的に興味があるのがAUTのヘルブスト選手。
彼は確か4ヶ月ほどでレースシーンに帰って来たのですが、
今までの医者の常識の中で考えると、4ヶ月であれだけの負荷がかかるとすれば
絶対に再建靭帯が弛んできちゃうと思うんですよね。

しかし、今期も素晴らしい滑りを見せてくれています。
AUTのメディカルチームが何か素晴らしいノウハウを持っているのか・・・
結構調子よさそうだもんなぁ。



さて、
今日でひとまずこの集中講座はいったん終了します。が、、
今後も一人の医師としてスポーツに関わる方々のフォローを行いつつ、
患者さんが安心して受診できるような医療を提供できるよう、努力を続けていく所存です。

なにかありましたら、いつでもこのページを通してメッセージをいただければ幸いです。
乱筆にお付き合いいただき、ありがとうございました。

~おわり~


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ACL損傷集中講座 10コマ目 【早期復帰への試み】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

長々と続けてきた連載も、あと2回!
今日は、トップアスリートに対する早期復帰を目指した医者サイドの試みについて書きます。

術式や再建材料を変えることによって早期復帰ができるような術式や再建靭帯は、
残念ながら今のところありません。
ただ、移植靭帯を早く骨孔に癒合させたり、効果的な筋力の回復による
早期スポーツ復帰というのは可能であると思います。
(ただ、最低限3~4ヶ月経たないと靭帯と骨が完全に結合しないので、
それより早い復帰はあまりお勧めできません)

俺が過去に経験したリハビリテーションの工夫は、以下の二つです。
術後超早期(1ヶ月以内)のものに限らせていただきます。

①電流による筋刺激(EMS)
これは、膝関節を動かすことなく筋線維に直接電気刺激を行って、
筋肉の萎縮を防いだり、筋力の増強を図るというものです。
商品名で言うと、CompexとかV-TRONとか。。。
術前、術後を問わずにいつでも使える器具です。
ただ、ACL再建のリハビリにおいてこの効果を検討した論文は、英文でもまだ出ていません。
ですので、効果があるかどうかはなんともいえないところです。

ただ、EMSを経験した方なら、
「きっと少しくらいは効果があるんじゃないかなぁ」
と、思う事でしょう。(俺もそう思います)
そこで現在、自分がACL再建手術を施行した患者さんの中でCompexの効果を検討しています。
そのうち学会で発表できるかな!?とは思っております。

この機械の良いところは、関節を動かさず・負荷をかけずに周囲の筋肉を鍛えられると言う事です。
可動域が充分でなかったり、スクワット等の運動ができない時期でも使えますね。

もちろん、術前に筋力を落とさないようにしておかないといけないのは
アスリートにとっては最低限の仕事であると言う事は、言うまでもありません!

②高圧酸素療法(HBO)
通常の空気中にある酸素濃度は約20%ですが、これを100%に近い酸素濃度の状態にした、
酸素だらけのカプセルの中に入り、さらに圧力をかける(2~2.3気圧)事によって、
血液中に酸素を溶かし込んでやり、組織内の酸素分圧を上げるという治療法です。
(化学で勉強したボイル・シャルルの法則です。覚えてますか!?)
組織内の酸素が多くなると、組織の修復が早まるという効果を狙っています。

有名なケースとしては、イングランドのD.ベッカム選手が、
ワールドカップ前に中足骨骨折をした時、骨癒合を早めるために使用した例が挙げられます。

組織に酸素を多く供給する事で、再建靭帯組織の回復を早め、
靱帯内の膠原線維を太くすると共に、bone-tendon healingも早めて、
結果として靭帯と骨の結合を強くする効果があると言われています。
(ただ、ヒトで研究した論文はなく、ウサギの成績しか出てないけどね。。。)

確か、今月号のSKI GRAPHICにも記事があったかな。
東芝病院の先生が出ていた気がします。
ちなみに、ハンカチ王子でブレイクした疲労回復のための「酸素カプセル」と、「高圧酸素」は
加圧の有無という点が異なります。
カプセルの場合、ほぼ1~1.2気圧です。
高圧酸素療法は、医師と技師の管理下に、病院でしか受けられません。

上記のいずれも、実際にアスリートが治療前後に行っていますので、
詳細は彼のBlogを見て下さい。
アドレスはこちら⇒ http://yasuhiko0418.seesaa.net/
渡辺靖彦選手です。
3月から4月前後の記事に、詳細が詳しく載っています!

最後の最後で人任せにしてしまって、すいませんY(>_<、)Y

Compexは自分も経験しているのですが、高圧酸素は入った人しかわからない感覚があるので。。。
Yasu君の記事には、すごく詳しく感想等が書いてありますので、参考にしてみてください。
非常に分かりやすいと思いますよ。

~つづく~
※本記事内に掲載された文章及び写真の無断転載を禁じます


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ACL損傷集中講座 9コマ目 【リハビリテーション】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

さて、今日はリハビリのお話。

各病院によって、荷重の時期、細かい内容は異なりますが、
これはあまり気にしなくて良いように思います。
大まかには

・可動域の獲得
・筋力強化
の、2つが大きな目的になります。
今日は、経時的な視点からリハビリテーションの紹介をしていきます。


ちなみに、当院では
術直後~術後1週;膝可動域訓練のみ
術後1週~術後2週;リハビリテーション開始
術後2週;1/3荷重歩行開始
術後3週;1/2荷重歩行開始
術後4週;全荷重
術後6~8週;装具off
といった感じでやっています。

それでは、簡単にリハビリの流れや種類をみていきましょう。

<術翌日より>
・膝関節持続他動的可動訓練
(Continuous Passive Motion=CPM)
これは術後2~3週間ほど行っています。
下の写真のような機械に下肢を乗せ、膝の曲げ伸ばしを他動的に行います。

 

術後1週間は過度の負荷を避け、可動域訓練だけにしています


<術後1週より>
・動的関節制動訓練
(Dynamic Joint Control Training=DYJOCトレーニング)
これは、入院中はもちろん、自宅に帰っても大切になります。
足部には圧力などを感じる受容器が多く、ここからの信号が感覚となって情報として伝わり、
膝だけでなく下肢の運動の助けとなります。
いわゆる、コーディネーショントレーニングの一部と考えていただいても宜しいかと思います。

これは、タオルを足でひきつけたり、伸ばしたりしているところです。

 

これは、不安定な板の上でバランスを取り、受容器を刺激しているところです。
最初のうちは椅子に座っていますが、慣れてきたら立位でも行います。



これ以外にも、足の指を使ってビー玉を掴んだりするのも、メジャーな方法ですね。
アメリカで行われたACL損傷予防を目的とした研究で、
筋力訓練と比べても同等以上の効果を示しているほど、素晴らしいリハビリです。
地味な動きですが馬鹿にせず、集中してやりましょう。

・チューブトレーニング(筋力訓練)
コーディネーション能力の獲得も重要ですが、筋力も再獲得しなくてはなりません。
軽い負荷をかけつつ、大腿四頭筋、ハムストリング、前脛骨筋などの筋力をつけて行きます。

これはハムストリングのトレーニング。

 

こちらは、腓腹筋(ふくらはぎ)のトレーニングですね。

 

やはり、早期にはスクワット等の過度の負荷はかけられませんので、
こういった軽い抵抗を使ってトレーニングする事が大切です。


<術後2週(荷重許可後)より>
カーフレイズなどの、荷重を要する筋力訓練を開始すると共に、
DYJOCトレーニングも立位で行っていきます。

オーバーロードになると、膝関節水腫(膝の腫れ)が出現するので、注意が必要です。

 

<術後3週以降>
ハーフスクワット、Backward walking(後ろ歩き)、Air chair(空気椅子)などが始まります。
筋力訓練の負荷がどんどん上がってきます。
ポイントとしては、大腿四頭筋、ハムストリング共にまんべんなくトレーニングする事でしょう。
再建に用いた腱についても意識して、筋力低下を防いでください。

後ろ歩きと空気椅子の画像を紹介します。

 

 


こんな感じで、リハビリは進んでいきます。
4週の時点で屈曲120度程度が可動域の目標ですね。
私の場合は、その後月に一度の診察を行い、2ヶ月以降はCybexという機械で
毎回筋力測定を行い、スポーツ復帰の目安としています。
患側/健側比が
60~70%(術後4ヶ月頃);Jog許可
80~90%(術後6ヶ月頃);ダッシュ、縄跳び等の運動許可 
8~12ヶ月で完全スポーツ復帰
ってゆう感じでしょうか。


~つづく~
※本記事内に掲載された文章及び写真の無断転載を禁じます


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ACL損傷集中講座 8コマ目 【合併損傷に対する治療】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

昨日は雪も降っていたので、仕事のあとは自宅で引きこもってました。
仕事&『のだめカンタービレ』鑑賞をしながら、夕方から最近ホットな餃子を作り始めました。
黒豚と白菜、エビできちんと作ってみたのですが、思いのほか餡の量が多く、大量になりました。
その餃子をビールと一緒にホットカーペットの上で食したところ、
かなりのペースで気持ちよくなってしまい、W-cupの放映を見逃しました・・・

ま、そんな無駄な時間もたまにはいいでしょ。
今日は、ACLに合併する事が多い損傷について紹介します。 

・MCL損傷
現在、MCL単独損傷に対しては、サポーターを着用し、受傷後1週前後の時期から
可動域訓練を開始するという保存療法が行われています。
こんな感じのサポーターをつけます。
(実際には、ここに前方不安定性をブロックする為のクロスバンドを追加しますけどね)


手術を要するMCL損傷は、交通事故などの高エネルギー外傷に伴う複合靭帯損傷や、
膝関節脱臼などでなければ、めったにお目にかかることはないですね。

ACL損傷に合併したMCL損傷に対しても、やはり保存的に治療するケースがほとんどです。
過去の論文を渉猟してみても、ACLを再建すれば、MCLは保存的に治療するだけで
充分な成績が得られている事が報告されています。

しかし、MCL損傷は時折膝周囲の石灰化を引き起こし、手術前に拘縮を起こしてしまう事もあるので
強い痛みや、可動域制限があるときには注意が必要です。

 ・半月板損傷に対する治療
基本的に半月板の不安定性が出現している場合には単独損傷に準じた治療をACL再建と同時に行いますが、2~3mm程度の小さな断裂の場合にはACLを再建し、関節の安定性が得られる事で自然治癒も期待できます。
特に、外側半月板の後方部は血流が良いために、自然修復の確率も高いです。
ただ、5mm以上の断裂の場合は、必ず何らかの処置を行います。

また、一昔前までは
半月板損傷≒損傷部の切除
だったのですが、最近ではできるだけ切除せず、修復(半月板縫合)を行った方が
臨床成績が良いという事がわかってきましたので、
俺は可能な限り、半月板は修復するようにしています。
これも、再建と同時に関節鏡視下に行う事ができます。

これは、縫合した半月板。
縫合に用いた黒い糸が見えますね。


~つづく~
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ACL損傷集中講座 7コマ目 【BTBによる再建法&ST/BTBの比較】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

五輪代表候補の家長選手がACLをやってしまいました!
個人的にはかなり好きなタイプの選手だったので、ものすごいショックです。
北京には間に合わないでしょう・・・残念です。

そんなつらい事もありましたが、今日のテーマは骨付き膝蓋腱(BTB)を用いた再建。
この方法、一昔前は「Golden Standard」と呼ばれていたほど、王道の手術法でした。
膝蓋腱(膝のお皿の下にある腱)を採取して、移植靭帯とするものです。

この白い部分が、膝蓋腱です。
この腱を・・・

こんな感じで切除すると・・・

こういう移植腱が取れます。



腱の両端には、骨が一緒についていますね。
これを、膝関節内に固定して、ACLとします!

靭帯の両端に骨がついているため、移植した靭帯が早期に癒合し、初期固定力も高いと言う利点がありますが、膝立てをしたり、正座をしたりすると膝の前面に痛みを感じる方が多いようです。
ですので、膝をつく事が多いスポーツ(柔道・レスリング)とか、
和式の生活が中心になる方には向いていないのかもしれませんね・・・

そして、昨日書いたような2ルート再建は残念ながらできません。
しかし、STと比べると再建靭帯の幅が太めである事から、
再建のルートをやや斜めに作成する事でそれに近い事ができます。
また、1本とはいえSTの2ルート法より術後早期における膝安定性に優れる
(と、当院では考えている)為、重度の内側&外側側副靭帯損傷を合併している患者さんには、
BTBを積極的に薦めています。


【STG法とBTB法の比較】

さて、ここらへんは手術を受ける時に、結構気になるところだと思います。
再建後のいろいろなファクターに分けて、解説していきましょう。

①スポーツ復帰度や活動性/術後の満足度
両者に差はないといって良いでしょう。
長期的には現在10年から15年の成績が論文になっていますが、
両術式間には、差がないという報告がほとんどです。

②腱採取に伴う筋力低下・愁訴
BTB法では膝伸展(大腿四頭筋)筋力が、ST法では膝屈曲筋力が、術後明らかに低下します。
しかし、術後リハビリテーションや、復帰過程の筋力トレーニングで十分に回復しますので、
腱採取部を意識したトレーニングを心がけてもらえば問題ないでしょう。

ただ、BTBの場合、膝蓋骨の一部を腱と一緒に採取する為、前述したとおり
「膝立て」や「正座」などの、膝前面の接触によって、採腱部の疼痛が出る場合があります。
これは、BTB特有の合併症と言えるでしょう。

よって、採腱部に対する侵襲と言う面では、STGの方が優れているのではないでしょうか。

③膝関節安定性
これは、前後/回旋とも、一般的にはBTB法の方が優れているといわれています。
要するに、膝が「ガッチリ」しやすいということでしょうか・・・

ただ、ACL再建膝というのは安定性が全てではないため、
総合的な臨床成績やスポーツ満足度といったTotalな成績では
ST法とBTB法の間に差は見られません。
あと、BTB法の場合、伸びにくい膝になるケースが希にあります。

④移植腱の固定・生着について
これも、BTB法の方が骨がある分がっちりと固定する事ができ、
周囲の骨にもST法に比べ1ヶ月ほど早く結合すると言われています。
そのため、超早期復帰を希望される患者さんや、医者の言う事を聞かず、『無茶』をしてしまいそうな人は、BTB法を選ぶ事があります。

⑤解剖学的な再建の可否

BTB法では移植腱が1本しか作成できないため、前述したような2ルート法の再建ができません。
つまり、生体に近い扇状の靭帯は作れないという事になります。
一方、ST法では2ルート再建が可能です。
現在、3ルート再建を行っている施設もあるくらいです。
(臨床的な成績はまだ発表されていませんが・・・)

ほか、ST法のメリットとして、腱が細くても何回か折りたたんで太い腱を作る事ができます。
女性の場合、採取した腱が細いケースが多いため、
医者側としてはST法の方が融通が効く印象ですね。



つまり、どちらの方法にしろ一長一短があるのですが、
両方式間に(総合的に見た)再建後の成績における大きな差はない!
というのが、現段階における膝専門医のスタンダードな考え方です。
ただ、まだまだACL再建は進化の余地を多分に残しているので、
5年後にはまた、スタンダードが変わってしまっている可能性も十分にあると考えてください。

もちろん、各スポーツ種目で大切な動きを阻害しない様な再建方法を選ぶという考えもあります。。
細かいことを言えば、ハードルの選手なんかは抜き足か踏み切り足かで方法を変えたりとかね。
空手やテコンドーの選手も、軸足と蹴り足を考えたりしますし・・・
まぁ、ここまで行くと膝関節専門医の中でもマニアックと言われるかもしれませんが、
そのくらい一生懸命考えている先生が多いのも事実です。

このあたりの選択は、主治医と納得が行くまでよく話し合ってください。
ちなみにサッカーの世界でも、エスパルスのDrはBTBメインだし、
マリノスやフロンタなら(確か)STGだったと思います。

~つづく~
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ACL損傷集中講座 6コマ目 【膝屈筋腱(STG腱)を用いた再建】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

今日はSTG(ハムストリング)腱を用いた再建について簡単にお話します。
現在主流となっている再建方法です。
ちなみに、STGって何でしょう!?

これは、移植靭帯の作成に用いる筋肉の略称です。
膝の裏側の内側に触れるコリコリした筋肉を採取して、再建靭帯とします。

その筋肉の名前が
ST;Semitendinosus(半腱様筋)
G;Gracilis(薄筋)
という名前なのです。

ハムストリングを採取するので、術後は膝の屈曲筋力が低下します。
STは膝を曲げた時の下腿(すね)を内側にひねる動きや、膝の屈曲、股関節の伸展。
Gは股関節や膝関節を内側に絞る動きの筋力に大きく関わります。
スキーにおいてはSTGを取ってしまう事で、クローチングターンやベンディング的な動作、ターン前半の角付け動作などに影響がありそうですね。
近年ではSTが術後1年ほどで再生するという報告もありますが、
実際に再生されたSTは細く、短いため筋力低下は避けられないようです・・・


しかし!!
この方法ならではのメリットもあります。
複数の再建靭帯を作る事ができると言う事です。

1コマ目の記事でも書いたのですが、ACLはAM束、PL束の2本から形成されており、
それぞれに異なった機能を持つと言われてます。
2本の靭帯を寄り合わせて再建する(double bandle)ことによって、
より解剖学的な、正常ACLに近い形態(扇状)のACLを作る事ができるのです。
もちろん、靭帯の通る骨孔も複数作成しなくてはならないので、技術的には格段に難しくなります。

最初、STGによる再建は1本の太い腱(1ルート)で行われていましたが、
近年2ルート法による術式を採用する施設が増えています。
(私も、基本的には2ルートによる再建を第一選択としております。)

ただ、1ルートによる再建が劣ると言うわけではありません。
若年者で骨が小さい場合には無理に2つのルートを作成する事で脛骨を削損してしまう危険があったりするので、技術的に難しい場合はむしろ太目の1ルート再建の方が良い場合もあると思います。

また、2ルートの再建を行った後に再断裂をきたした場合には、再再建の時に、骨孔(トンネル)を開けるスペースが限られてしまい、BTBによる再建ができなくなってしまうケースもありますね。

現段階では、2ルートの術式にもいろいろな考えがあり、術式自体が進化過程にありますので、
今後いろいろなメリット、デメリットが出てくる可能性もあります。
(もちろん、良い術式だという理念と裏づけ、確信を持って手術を行っておりますが・・・)
実際に現段階では、両術式間に成績の大きな差はないような印象です。

最後に、簡単に2ルート再建の様子を、写真で見てみましょう。
最初は、大腿骨に穴をあけているところ。
細い(直径2.4MM)ワイヤーを刺して、位置を確認しています。
右下にすでに一つ、トンネルが開いていますね。

良い場所だったので、そのワイヤーをガイドにして、さらに太いドリルで穴を開けます。
これがだいたい直径6~7MMです。

無事にトンネルが二つ開きました。
ここに、移植靭帯(5コマ目の記事参照)にかけた糸を通して、2本の靭帯を引っ張り込んでいきます。

これで2本の靭帯が固定されました。
ちゃんと扇状になっていますね!
いただきました~!星、3つです!(by マチャアキ)


これが、1年後にはこんな感じに育ってくれます。
無事に、ACLが再建されました!
こういう再建ACLを見れると、ホッとします。


~つづく~
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ACL損傷集中講座 5コマ目 【再建手術総論】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

この集中講座を楽しみにしておられる全国50名あまりのACL再建ファンの皆様、こんばんわ。
退院したにも関らずいきなり当直がヒットし、ちょっとテンション↓気味の整形外科医です。
過酷な環境にも負けず、頑張って書こうと思います。。。

今日から、再建手術あれこれについての記事が続きます。
①総論
②各手術法の解説
③各手術法の比較
④合併損傷の治療
⑤リハビリテーションから競技復帰
に分けて、毎日少しずつ書いていく予定です。
ちなみに、これら(今までも)の記事は、日本整形外科学会が作成した
『ACL診療ガイドライン』の内容と矛盾しないように書いていますが、あくまで施設によっては枝葉の部分で違いが出てくる事がありますので、ご理解いただきたいと思います m(._.)m 

さて、手術適応のある患者さんに対してはACL再建術を行います。

私の場合、時期的には受傷後1ヶ月程度経ってから再建を行います。
時間をおくのは、膝自体の可動域を回復させたり、内外側側副靭帯などの複合靭帯損傷が合併していれば、ある程度そちらの組織ダメージが修復されるのを待つという意味があります。
要するに、「正常により近い」状態でACLを再建する事が望ましいのです。

特に、膝が完全伸展できない状態でACL再建を行うのは、リハビリが長引く危険がありますので非常に危険です。現在では『受傷直後の急性期(2週間以内)は術後に関節の線維性癒着が起きる危険性がある』と、いうのが一般的な考えですね。


ただ、最近ではサッカーの森本選手のように、超早期(受傷後翌日とか!)に再建が行われる事も多いです。確か、中田浩二選手なんかも受傷後すぐに再建をしていた気がする。
このような時期の再建でも成績が良ければ、今後いずれ変わっていく部分かもしれません。
まだ成績が発表されていないので、スキー(スポーツ)で飯を食っており、
とにかく早く復帰しなくては困るという人以外には、あまりお勧めはしません。

続いてはいろいろな再建方法(材料)について。

過去には腸脛靭帯(ITT)や、人工靭帯を用いたACL再建が主流の時期もありましたが、ITTによる再建は中長期的に膝の動揺性が再発する危険が高く、小児や複数回受傷例などの限られた症例にしか行っていません。
Leeds-KEIOをはじめとした人工靭帯も、自家組織より成績が劣る傾向がある事が示されていますので、現在ではあまり行われていないようです。

あと一般論として「人工靭帯による再建は早期の競技復帰が可能である」という事が言われていたようですが、今のところそういった結果をはっきりと示したエビデンスレベルの高い論文はないようです。
ただ、自家腱の固定の為に、関節外で人工靭帯を補助的に用いると言う意味では、
今でも人工靭帯は広く使用されていますので誤解しないで下さい。
(俺も使っています)

ちなみに、これが移植靭帯の写真です。

腱の両端を人工靭帯でつなぎ、骨に埋め込みます。
人工靭帯の代わりに強力な糸を使って作る先生方もいらっしゃいまして、その作り方には
様々なバリエーションがありますね。

この靭帯が、下の写真のようなイメージで、骨内に引き込まれて固定されます。

脛骨、大腿骨共に骨に穴を開け、その穴に靭帯を引っ張り込んで固定するというイメージが
なんとなく理解してもらえれば、十分です。

そんなわけで、現在主流となっている再建術の方法を、再建材料によって分類すると
・膝屈筋腱=半腱様筋(ST)、薄筋(G)を用いた再建
・膝伸筋腱=骨付き膝蓋腱(BTB)を用いた再建
の2つが挙げられます。

どちらの方法にしても、移植靭帯が自分のACLとして生着するまでの仕組みは一緒です。
ポイントとしては
①移植された靭帯を栄養する血管ができ、靭帯線維の強度が強くなる
②移植された靭帯と周囲にある骨が結合して、自分の骨に靭帯が固定される

という2つのステップを踏まないと、自分の靭帯としては機能しないという事です。
(ちょっと難しい話になるので、興味のない方は読み飛ばしていただいても結構です)


まず①の話。
移植された靭帯は最初、周囲から栄養(血液)をもらう術がありません。
だんだん栄養血管ができていきますが、術後4~6週の時点は血流が不十分であるために、移植靭帯はいったん壊死に近い状態になってしまいます。
(文章を読んだだけで、「弱そうだな」って感じがするでしょう!?)

その後血流が増えてくると、いったん壊死した靭帯が血流を得て、再び強くなってきます。
このような変化を、腱内部の組織再構築(リモデリング)と呼びます。
そして、術後10週ではこの “リモデリング” がだいぶ進行していると一般的には言われてます。

そして②の話に移ると、どちらの方法も再建靭帯を大腿骨・脛骨の骨孔(トンネル)に通すというのが基本的な方法になるのですが、移植した靭帯が周囲の骨と結合する事で、ようやく自分の靭帯として大腿骨と脛骨の動きを制動してくれると言うわけです。
この、靭帯と骨の結合に術後最低2~3ヶ月はかかると言われています。


さて、読み飛ばした方の為に①&②を簡潔にまとめると
・移植靭帯は、術後4週から8週の期間が一番弱く、再断裂の危険が高い!
・術後3ヶ月までの期間は、移植靭帯が骨と十分に結合していない為、靭帯が引き抜かれてしまったり、弛みが出現する危険が高い!

と、言う事になります。
術後3ヶ月くらいまではトラブルに注意!って事ですね。
これが、膝の医者の言うところの、「術後早期は頑張りすぎちゃダメだよ」という理由です。

ただ、ShelbourneやHowellといった、いわゆるACLの重鎮たちが、早期(加速的)リハビリテーションをやっても、それほど問題なかったよー、という報告も出していますし、無茶している患者さんでも特に異常なく経過している方も実際にはいらっしゃるので、結論としては
「まだまだ分からない部分が多い」
と言うのが正直なところです。
 

ちなみに、再建した靭帯の強度は、正常膝の80%前後という報告が多いです。
術後の筋力Upによる、靭帯への負荷軽減は必須ですね。

~つづく~
※本記事内に掲載された文章および写真の無断転載を禁じます


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ACL損傷集中講座 4コマ目 【放置/保存療法】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

今日はまず、『ACL損傷をそのままにするとどうなるか』という話をしていきます。

すぐに手術を希望しない場合はサポーターの着用や筋力訓練によって、そのまま放置となります。
つまり、ACLは切れっぱなしということです。。。
実際には日常生活に限れば、それほど不自由を感じないという方も多いようです。
ただ、レクリエーションレベルであっても、スポーツをする方は、膝の不安定性が強く、
満足のいくパフォーマンスは見込めないケースが多いですかね。
(具体的に言うと、運動中に膝が前方へ『ガクッ』と抜けてしまいます)

ちなみに、大きな大会を控えている選手や、どうしても出たい大会があって
再建手術をすると間に合わなくなってしまう・・・
といった場合には、短期間限定で放置しておく場合もありますよ。
ただ、その間はACL不全でスポーツをするわけですから、半月板や軟骨の合併損傷をきたし易いと言うリスクがありますので、ご注意を。

スキーをする方なら、CTIやDonjoyなどの硬性装具を、スキーをする時だけ付ける、
というやり方をします。
下の写真を見て下さい。こんな形の装具です。

ただ、競技スキーをされる方、コブ斜面を滑る方、早いリズムのショートターンができる方などの場合、
やはり満足のいくようなパフォーマンスは得られないようです。


ちなみに、長期に渡ってACL損傷を放置しておくとどうなるのでしょうか!?
ACL機能不全によって、膝不安定性は必ず残ってしまいます。
すると結果として、二次的に半月板や軟骨の損傷を引き起こしたり、
若い年代のうちに変形性膝関節症をきたしてしまいます。

ここで、50代の患者さん2人の膝関節鏡写真を見てもらいましょう。
上の写真は特に異常のない51歳の男性、
下の写真は30年間ACL損傷を放置していた53歳の女性です。
女性の方は、痛みで歩行が困難な状態です。。。

一番上が大腿骨、その間にあるのが半月板、一番下が脛骨です。
正常膝では大腿骨と脛骨の表面を、白くて平滑な軟骨が覆っています。
ACL損傷膝では軟骨が完全に消失しており、骨が露出してしまっているのが分かりますか?
黄色っぽく窪んでいる所が、そうです。
半月板も消失してしまいそうなくらい、削れています。
そして、それぞれのACLを見た画像がこちら。
女性のACLは大腿骨側(上のほう)で断裂しており、全く機能していません。


ACL不全というのは、ここまで変形性関節症を進行させてしまうのです。

あとは日常生活の問題がなくても、スポーツ満足度は低下してしまいます。
例えば、サッカーの城選手はACL損傷(高校生の時!?)を放置しながらも試合に出続けたと
言われていますが、膝の変性が進行すると共に、パフォーマンスも徐々に低下してしまいました。
とはいえ、城選手はあの年まで高い競技レベルを良く維持できたな、と思いますね。
あれは本人のものすごい努力があったからこその、特殊な例だと思ってください。

サッカー選手では高校時代にACL損傷を放置してしまったがゆえに、
軟骨や半月板、側副靭帯の損傷を繰り返してしまい、その結果急速にパフォーマンスが低下し、
20代前半という若い時期での選手引退を余儀なくされる方も少なくありません。
それだけ、ACL損傷の長期間にわたる放置というのはリスクが高いのです。

そういえば、リトバルスキー選手の膝も、ものすごく変形していましたよ!
あれにはマジで度肝を抜かれました。ACL損傷があったのかは分かりませんが・・・


そんなわけで、当院では60才未満の方や、スポーツ/仕事の活動性が高い方には
なるべくACL再建術を受ける様にお勧めしています。
ちなみに、3ヶ月以上ACL損傷を放置しておくと、次第にACL機能不全に伴う
軟骨や半月板の損傷を引き起こす可能性が高まっていくので注意が必要です。
ですので、手術を考えている方は遅くとも受傷後半年以内に受けることをお勧めします。
その間は、ACLサポーターの着用下であれば、スポーツ活動を行ってもかまいません。

そして、保存療法というのもあります。
完全ではなく部分断裂(AM又はPL束のみの断裂)であったり、完全に靭帯の実質が切れていても靭帯表面を覆っている滑膜が残存している場合に限り、残存した靭帯が自然に癒合するのを待つ、という治療法です。
時間的な適応は急性期、すなわち受傷後1~2週間以内です。
靭帯の評価を行う為にまず関節鏡を行い、保存療法が可能であれば装具
(厳密には少し異なるのですが、下の写真を参考にどうぞ)
を着用して膝可動域訓練を行うと共に、2週間前後の免荷(体重をかけない事)を行います。

ただ、4週から6週という長い間のリハビリ入院期間が必要であり、その苦労の割には成長期や思春期の患者では再建手術に比べて明らかに成績が劣る(癒合しない事が多い)事、保存的に治癒した靭帯も、強度的には再建した靭帯や正常の靭帯に比べて劣る。。。
と、言う事で、当院では
①年少者(12~13歳以下)
②スポーツをしない中高年の患者で再建は希望しないけれど、なるべく靭帯を治したいという方
を適応とし、症例を絞って行っています。
高校生以上のスポーツ選手であれば、まず選択枝にはならないでしょう。

余談ですが、なぜ幼年期の患者にはACL再建を行わないかを簡単に説明します。
まだ身長が伸びる時期では特に大腿骨側に骨端線(骨の成長部)が残っているのです。
右の患者さんのMRIでは、黒く写っている骨の部分に横走する白いラインが見えますね。
黄色の矢印で示した部分です。

一般的なACL再建法では、靭帯を通すトンネルを掘る事でその骨端線を大きく傷つけてしまい、
将来的な骨成長を阻害してしまう場合があるのです。。。

ですので、基本的には身長の成長が終盤に差し掛かってからの再建が望ましいのですが、
どうしても幼年期に再建が必要な場合には、骨端線を避ける方向に少しねじれの強いトンネルを作る手術か、腸脛靭帯の末梢を切離し、膝の関節の裏から関節包を破って関節内に引っ張り込み、ACLの代わりにするような、超、超特殊な再建をします。

ちょっと話が横道かつマニアックにそれましたね。
すみません。
でも、先日そういった質問コメントを頂きましたので、触れておきます。

~つづく~
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ACL損傷集中講座 3コマ目 【診断・検査】 [膝前十字靭帯(ACL)損傷]

さて、今日はハードなオペがうまく行ったことに安心して、病院で暮らしているにもかかわらず、
同僚の先生と一緒に松葉杖&ギブス姿で病院近くの飲み屋に行った所、患者に間違われて、

『病院抜け出して飲みに来ちゃったんだろ。たまにいるんだよなー、そういう若い奴が!』

と、お店の常連客に声をかけられました。
医師としてはちょっと複雑な気分・・・
入院中に病院を抜け出して、飲みに行ってる患者がいるんだな。\(°o°;)/

まぁ、そんな整形外科医がおくるACL講座も、ついに3回目を迎えました。
今日は、診断と検査についての話です。
まず、自分でも簡単に分かる自覚症状を紹介します。

・関節血腫
当たり前の話ですが、ACLは関節の中にあります。
靭帯損傷が起きると、関節内に血液がたまり、膝が腫れます。
膝の外傷後に関節が腫れたら、前十字or後十字靭帯損傷、又は膝関節の骨折を疑ってください。

とにかく、外傷後の膝の腫れは疲れによるものや運動後の膝の腫れとは違い、重症である場合が多いので、必ず整形外科を受診して頂きたいと思います。

・膝崩れ
ACLが切れてしまうと前方に膝が抜けてしまう事になります。
歩行時や階段昇降で、膝が『ガクッ』と外れる感じがあったら、要注意です。

上記の2つは、みなさんでも簡単に分かる臨床的な靭帯損傷のサインです。
心の片隅にでも置いていただくと非常にありがたい。

続いては、病院での診察。
整形外科医であれば、徒手検査(膝を前方に引き出したり、捻ってみて脱臼があるかどうか確認する)で半分以上のケースは診断可能です。ただ、アスリートの場合、その人並み以上に優れた筋力がゆえに、徒手検査だけでは診断がつきにくい場合があります。
当院でのルーティン検査は、以下の2つ+αです。
その検査の概要と目的を簡単に説明します。

・テロスX-p(レントゲン
これは、15kgほどの力で、ふくらはぎを前方に押し出して取ったレントゲン写真です。
こんな感じで撮影します。
要するに、ACLに負荷をかけて、本当にACLが機能しているのかを調べます。


そして、撮影した写真がこちら!

 

左側がACL損傷側なのですが、ACLが切れることで下腿が前方に偏位しちゃってますね。
実際に計測すると15mmほどの差が出ています。
(正常人の場合、左右差はあっても5mm以下)
ACLが切れると、これだけ膝が前に抜けちゃうんだということが分かってもらえれば十分です。

これで9割以上の患者さんは診断がつきます。
それと同時に、X-pではACL損傷時の外力に伴う骨傷の有無などもチェックしています。

・MRI
テロスでも分からないような症例は、MRIが頼りになります。
例えば、靭帯の部分断裂の場合なんかはMRIじゃないと分かりません。
また、ACL損傷の診断がついても、他の靭帯や半月板、軟骨等に損傷があると、同時に様々な処置が必要になります。
治療の戦略を立てると言う意味でも、かなり重要な検査です。
個人的には必ず行っている検査です。

・関節鏡検査
前述の検査でもはっきりしない場合や、部分損傷などでオペか装具療法かを迷うような症例では、関節鏡検査を行います。実際に関節の中をカメラで見ながら、金属製の棒で靭帯を触って、連続性や断裂の有無をチェックします。
ってゆうか、ここまで行くと腰椎麻酔や全身麻酔でやるので、ほとんど皆さんの感覚で言うと、手術に含まれるかもしれません。



これは、ACL再建1年後の患者さんです。
右下から左上に向かって走っている線維が、再建された靭帯です。
真ん中にL字状の金属の棒が見えますが、この折れ曲がっている部分の大きさが2mmくらいです。
こんな棒を膝の中に入れて、あちこちを触診しています・・・


現場での話に戻ると、9割以上の患者さんは診察、X-p(レントゲン)、MRIで診断がつけられます。
ただ、正直なところ診察と画像だけでは分からない症例もあります。
そういった分かりにくい症例に限り、関節鏡検査を行います。

さて、このように診断がついたら、いよいよ治療になります。
手術で再建するのか、そのままにしておくのか・・・
そのあたりの話を、明日からしていきますね。

しかし、ギリギリの更新でした。
焦って書いた挙句、つまらない内容というのが最悪のパターンなので、2日に1回くらいのペースにはなってしまいますが、きちんと準備をしながら更新して行きたいと思います。

~つづく~
※本記事内に掲載された文章および写真の無断転載を禁じます

 


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